けんちょむの生活記録

とりあえずこのまま何となく生きていくことの重みに耐えられずに廃人になってしまいそうなので、何か書かして下さい。

金融緩和でもインフレにならない理由

異次元緩和でも日本にインフレが起こらない極めてシンプルな事情(大原 浩) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

 日本銀行の黒田総裁によって2013年4月から導入されたいわゆる「異次元」金融緩和政策。まさに「異次元」の金融緩和政策が続いているが、いまだにささやかな2%の物価上昇でさえ実現できていない。

 しかも、7月31日の金融政策決定会合で「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」を決めている。つまり、これからもさらに金融緩和を続けなければならないため、長期金利の変動をある程度認めて緩和の副作用に配慮するということである。

 このような日銀(黒田氏)の政策は経済学で一般的な「資金を大量に供給すれば物価が上昇する」という理論に基づいている。しかし本当にその理論は(いつも)正しいのか?

 極端に単純化して、この世の中に100本の缶ビールと1万円しか存在しないとする。その世界で、超金融緩和を行い通貨供給量を倍増して2万円にしたとする。これはとてつもない金融緩和で、マネーの価値は半分(物価は100%上昇する)になるというのがこの理論の示すところだが、大事なものが欠けている。

 缶ビールの供給は増えないという前提だが、実際には缶ビールの価格が上昇すれば当然生産も増える。通貨供給を2倍にしても、商品の供給が2倍になれば(理論的には)物価は上昇しない。それが現実の経済である。

 さらに言えば、50メートルプールから水をあふれさせるには、相当量の水を供給しなければならないが、プールへの水の供給を止めるには水道の蛇口を締めるだけでよい。

 金利において、「高騰させるのは簡単だが低下させるのは難しい」ということを説明するのにこの「水道理論」が良く使われる。

 いくら大量の資金供給を行っても、その供給によって増えた資金の保有者はいつでも自由に使える(使わなくても良い)ので、なかなか政策当局の思い通りの効果が出ない。

 ところが、資金の供給を止めると、資金の調達(借り手)側は不渡りなどを出すわけにはいかないから、背に腹を替えることができず、かなりの高金利でも涙を飲んで借りるので、あっという間に金利が高騰するのだ。

 この蛇口を止める現象は年末・年始、期末・期初の資金繁忙期には(ミクロ的に)頻繁に起こり、年率で数百%というとてつもない金利になることもある。 

  アベノミクスの「第1の矢」として、金融緩和により流通するお金の量を増やしてデフレマインドを払拭すると首相官邸サイトにありますが、異次元の金融緩和がデフレ脱却、ひいてはインフレに繋がらない理由は、金融緩和に対する市場の論理にあるようです。

 確かに、かぼちゃの馬車騒動に象徴されるように、多くのプレイヤーが参入することにより、不動産市場は高騰しました。この理由は明白です。お金がたくさん市場に出回るのに対して、買える不動産の数は変わらないからです。そうなれば、当然売り手としては、買い手が増えているわけですから、ちょっと高い値段で売ってやろうと考えます。買うことのできる不動産の数は限定されているため、当然の帰結として、不動産価格は高騰しました。

 これに対して、企業としては、モノを売れるだけ売りたいわけです。アマゾンやユニクロなど、現代のあらゆる産業はそうですが、生産コストを極限にまで圧縮し、安い値段で大量の消費者を相手にして、その分野のシェアを独占してやろうという方向に動いているわけです。この場合、買い手も増えますが、売り手のほうもガンガンと生産を挙げていくため、モノの値段は一向に上がらないということになります。

 このような供給過剰の世界で、いくら資金を供給しても物価が上昇しないのはある意味当然かもしれない。

 パウエルFRB議長が金利引き上げを2019年で打ち止めにする意向を表明した後、さらにトランプ大統領が「金利引き上げは望ましく無い」と述べたが、このような供給過剰社会で金利の引き上げは困難であり、それは欧州においても同様である。

 デフレ経済のきっかけは、1990年の日本のバブル崩壊であったかもしれないが、今や世界中がデフレ体質になっており、日本もその「グローバルデフレ経済」から抜け出すことはできないのだ。

 先に述べたように、世界大戦級の大規模な戦争が供給過剰を解消してきたが、1945年以来、「過剰在庫」が世界中に積み上がっている。これを悲惨な戦争以外の手段で解消できるかどうかが世界に与えられた課題である。

 最近「米中貿易戦争」が騒がれている。トランプ大統領がどの程度世界経済の仕組みを「理論的」に理解しているのかは明らかではないが、政治経験を全く持たないが倒産を4回も経験した稀有なビジネス界出身の指導者は、世界中のどのようなリーダーよりも経済の本質を「直感的」に理解しているように思える。

 優秀なブレインのサポートがあったにせよ、「供給過剰の総本山である中国」に「貿易戦争」を仕掛ける最終判断を行ったのはトランプ氏である。

 もっとも、このような「荒技」で国内への「供給過剰」を抑え込めるのは、「嫌なら中国全土を焼野原にして過剰供給をストップするぞ!」という脅しをかけることができる米国だけの特権である。

 世界的に広がるデフレを根本的に食い止めるには、「過剰供給元への焦土作戦」しかないが、我々がそのようなことを論じても仕方が無い。トランプ氏が手元のボタンを押すかどうかにかかっていることになるが、現実的ではあるまい。

 デフレは、社会の生産性が向上する限り、当然の帰結だと思っています。かつては200数メガバイトだったフラッシュメモリも、今では何10ギガという性能になりました。その前はCDでしたし、さらにその前はフロッピーディスクだったことを思うと、隔世の感があります。これは一例ですが、こんな具合に説明できる「社会の生産性向上」の話が、世界の至る所であります。これは、かつての人類の夢でした。しかし今、社会の生産性が向上したことによるデフレは今、悪者として叩かれています。

 本当にこれ、悪いことなのでしょうか。私は本質的にはいいことだと思っています。きっと昔の人は、生産性の向上により、人間はもう働かなくてもいいじゃんという風に未来を夢想していたと思うのですが、現実には、安い賃金でロボットみたいに働かされている。問題はここだと思っています。

ホーキングが遺した警告「富を再分配しなければ人類は貧乏になる」 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

 ホーキングは2015年、米ニュースサイト「レディット」のイベントで、技術革新に伴って人々の経済格差が拡大するのを食い止める唯一の方法は、富の再分配だと述べていた。ホーキングの死後、ネットで多くのユーザーがその言葉をシェアしている。

 レディットのユーザーはホーキングにこう聞いた。「技術革新で人間が仕事を奪われる可能性はあるか。自動化すれば人間より速く安く仕事ができるので、大量失業につながるのではないか」

 それに対してホーキングはこう答えた。「ロボットが必要なものを全て生産するようになれば、富の分配をどうするかによって結果は大きく違ってくる」

 「もしロボットが生み出す富を皆で分け合えば、全員が贅沢な暮しをできるようになる。逆に、ロボットの所有者が富の再分配に反対して政治家を動かせば、大半の人が惨めで貧しい生活を送ることになる。今のところ後者の傾向が強い。技術革新で富の不平等は拡大する一方だ」

 人類が行き着く先は、最終的には最低限の賃金が保証されるベーシックインカムなのではないかなと思ってます。もしロボットが人間に置き換わるならば、人間に代わってロボットが働いた対価は、そのロボットの一部の持ち主ではなく、置き換わった人間に還元されなければ、たぶん未来は暗いんじゃないですかね。